事務所ブログ

雑記帳

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 弁護士費用
  4. 【弁護士執筆】弁護士費用が高いと思ったら読む記事

【弁護士執筆】弁護士費用が高いと思ったら読む記事

これは弁護士に事件を依頼するときに出された費用の見積もりが高いと思った方に読んでほしい記事です。

弁護士に仕事を依頼するときの料金はかなり高額というイメージがあります。

それは間違いではありません。案件の種類にもよりますが数万円~数十万円、場合によっては100万円を超える金額が弁護士費用として請求されます。

高額な「買い物」だけにその料金が妥当なものなのかどうか、依頼者にとっては非常に気になる点です。

また、現実的な問題として提示された料金や費用が高すぎて払えないというケースもあるでしょう。

この記事はそんな弁護士の報酬や費用の問題で悩んでいる方に弁護士費用に関する基本的な知識を解説するとともに費用負担をおさえて弁護士をリーズナブルに利用するためのノウハウを伝授します。

なお、この記事を書いている私は中小企業・フリーランスのビジネスに関する法律問題をメインに扱っている弁護士です。私の経歴について詳しくお知りになりたい方はこちらのページをご覧ください。

>>長崎国際法律事務所代表弁護士・谷直樹のプロフィール


なお、企業の方で弁護士を効率的に、上手に活用したいと思っている方はこちらの電子書籍をお勧めします。費用を軽減しつつ弁護士に相談したり事件処理を依頼するための実践的なノウハウをまとめていますのでぜひご一読ください。

>>弁護士が教える中小企業・個人事業主のための上手な弁護士の「使い方」(kindle版)



弁護士費用には費用と報酬がある


まず、弁護士費用について基本的なところをおさえておきましょう。

一口に弁護士に支払う弁護士費用と言っても実は2種類あります。それは費用(実費)と報酬です。

弁護士費用=費用+報酬



費用とは、弁護士が事件処理をするときにかかる必要経費のことです。たとえば裁判所に納める収入印紙代や郵便切手代などが費用に含まれます。

一方、報酬とは、弁護士に支払う料金のことです。つまり弁護士にとっては売上になるお金ということになります。たとえば、着手金、成功報酬(報酬金)、手数料などが報酬に含まれます。

「弁護士費用が高い」、「弁護士費用を安くしたい」

そう考えたときはまず弁護士費用には費用と報酬があるということをきちんと理解しておくことが大切です。


費用をどこまで依頼者に負担させるかは弁護士によって異なる


先程書いたとおり、費用は弁護士が事件処理を行うためにかかる実費なので基本的にどの弁護士に頼んでも発生することになるお金です。収入印紙代などは弁護士に頼まずに自分で裁判をする場合にも発生します。

では、この費用についてはどの弁護士に頼んでも安い・高いはないかというと、決してそんなことはありません。

なぜかというと、発生する実費のうちどこまでをクライアントの負担にするかは弁護士の方針によって異なるからです。

裁判所に納める収入印紙代や郵便切手代などは依頼者負担とするケースがほとんどだと思いますが、弁護士が裁判所に出頭する場合の交通費などは弁護士によって取扱いに幅があります。

そのため、弁護士費用のうち実費負担が少ない弁護士を選ぶことで費用の総額をおさえることができる可能性があります。



弁護士の報酬には相場がある


次に、弁護士費用のうち報酬について見ていきます。

報酬とは要するに弁護士に支払う料金ということです。この弁護士の料金について現在の制度では弁護士は自由に決めてよいことになっています。つまり弁護士報酬は自由化されているということです。

しかし、自由化されているとは言っても弁護士報酬には一定の相場があります。

大半の弁護士は弁護士の全国団体である日弁連が定める弁護士報酬基準に沿って自分の法律サービスの値段を決めています。つまり、この弁護士報酬基準を見れば弁護士に事件を依頼するときの相場がわかるということです。

この基準はインターネットで「弁護士報酬基準」と検索すると誰でも見ることができます。そのため、弁護士から示された弁護士費用(特に弁護士の報酬)が高いと感じたときはこの弁護士報酬基準に照らして相場価格になってるかどうかを調べてみるのが有益です。

この弁護士報酬基準に沿った弁護士の料金表の読み方についてはこちらの記事を読んでいただくと理解しやすいでしょう。

>>弁護士が教える弁護士の料金表の読み方-基本編


複数の弁護士から相見積もりを取ってみる


「弁護士費用が高い」、そう感じたときはそのまま依頼・契約をするのではなく別の弁護士からも見積もりを出してもらって比較することが大切です。

先程も書いたとおり弁護士の料金は自由化されているので最初に相談して見積もりを出してもらった弁護士が実は相場よりも高い料金を設定していたという可能性はゼロではありません。

また、相場通りだったとしても着手金や日当など、細かい算定方法に違いがある可能性があります。この細かな違いが意外と大きく費用負担に響いてくることもあるのです。

たとえば、日当であれば裁判所への出頭1回ごとに発生する契約になっていたとすると事件が長引くほど費用負担が重くなります。

このように思いがけず弁護士費用がかさむことがないようにするためにも、なるべく複数の弁護士から相見積もりを取って比較することが非常に大切になってきます。

着手金、成功報酬、日当についての注意点やコストを抑えるコツは下の記事を読んでみてください。

>>弁護士が教える着手金の負担を軽くするための7つの方法

>>弁護士が教える成功報酬の落とし穴と対策

>>弁護士の日当について



弁護士費用は「費用」、「着手金」、「成功報酬」、「日当」の4つを総合的に検討する


これは弁護士から示された料金の見積もりを検討するときに大切な視点です。

それは次の4つのことを総合的に検討してその弁護士費用が高いか安いかを判断するということです。

  • ■ 費用(実費)
  • ■ 着手金
  • ■ 成功報酬
  • ■ 日当


事件を依頼するときはどうしても弁護士に一括ですぐに払うことになる着手金に目が行きがちですが、それ以外の3つにも気を配る必要があります。

たとえば、着手金が安めに設定されている代わりに成功報酬のパーセンテージが高く設定されている料金体系を採用している弁護士もいます。その最たるものが着手金不要の完全成功報酬ですね。

また、意外と見落としがちなのが日当です。

裁判が長引くとこの日当の算定方法や金額によっては着手金と同額程度の費用負担になる可能性があるため決して侮れません。

弁護士の見積書をチェックするときは着手金だけでなく、成功報酬や日当の額・パーセンテージや発生条件、費用(実費)の負担範囲などもしっかり確認して契約するかどうかを決めるようにしましょう。




以下では、弁護士費用をおさえて法律サービスを利用するための具体的なノウハウをご紹介します。

弁護士費用が高いと感じられた方はこれらの方法を試してみてください。

弁護士費用をおさえる方法① 法テラスを利用する


まず、一番初めに検討したいのが法テラスの利用です。

法テラスとは正式名称が「日本司法支援センター」という公的機関です。法律サービスを一般の人が利用しやすくするために様々な事業を行っています。法テラスの窓口は全国にあります。

この法テラスには「民事法律扶助」と呼ばれる支援制度があります。

これは金銭的に余裕がない個人の方が弁護士などの法律サービスを利用しやすくすることを目的とした制度です。その制度は大きく分けて、無料の法律相談弁護士費用の立替です。

無料の法律相談は名前の通り、弁護士の法律相談を無料で受けることができる制度です。収入や資産が一定以下という要件がありますが、同一案件について3回まで弁護士の相談を無料で受けることができます。

無料の法律相談を受けた上でその弁護士に事件処理を依頼することも可能です。その場合、やはり一定の要件を満たす必要がありますが法テラスが着手金などの弁護士費用を立て替えてくれます。

「立替」なので結局は弁護士費用は自分が負担することになります。

しかし、依頼時に10万円以上かかることが多い弁護士費用を立て替えてもらえるのは大きなメリットです。立て替えてもらった費用については、その後、月額5,000円から法テラスに返還していくことになります。

実は法テラスのメリットは費用を立て替えてもらえるだけではありません。法テラスには一定の費用の立替基準というものがあり、弁護士もその基準に沿って料金を設定するのが一般的です。

この法テラスの立替基準は一般的な弁護士費用の相場よりもかなり安いです。

つまり法テラスの民事法律扶助制度を利用して弁護士に依頼すると相場よりもかなり安い料金で弁護士を頼むことができるということになります。

注意点としては、以下の点が挙げられます。ご自分が民事法律扶助の利用要件を満たすかどうかはお近くの法テラスに問い合わせてみることをお勧めします。

  • ■ 収入・資産が一定以下という要件がある
  • ■ 事件の種類・内容によっては法テラスを利用できない場合がある
  • ■ 個人の事業に関係しない案件しか利用できない



一番注意したいのは「個人の事業に関係しない案件しか利用できない」という点です。つまり、会社などの法人や、個人事業主の商売・ビジネスに関する案件は法テラスを利用できないということです。

そのためご商売の関係での法的トラブルについては別の方法で弁護士費用を節約できないか検討する必要があります。


弁護士費用をおさえる方法② 本人訴訟で対応する


弁護士費用を節約する方法としては、弁護士に全ての事件処理を任せるのではなく「自分でやれることは自分でやる」という方法も検討に値します。

弁護士に頼まずに自分で裁判を戦うことを「本人訴訟」と呼びますが、このような本人訴訟にすることで弁護士費用はおさえることができます。

本人訴訟と言っても、法律の専門家に相談せずにその手続の全てを自分(自社)で行うということは現実的ではありません。

たとえば、

  • ■ 特に重要な書面の作成だけは弁護士にお願いして書いてもらう
  • ■ 定期的に弁護士に相談してサポートを受けながら裁判を進める
  • ■ 一審は弁護士に依頼し控訴審以降は本人訴訟で対応する


このように事件の種類や自社の状況に合わせて色々な対応方法が考えられます。いずれの方法をとるにしても全ての手続を弁護士に任せるよりは弁護士費用をかなりおさえることができます。

本人訴訟で戦う場合のノウハウや注意点については中小企業向けの裁判対応の仕方を解説したこちらの書籍で詳しく書いていますのでぜひ手に取ってみてください。

>>弁護士が教える中小企業・個人事業主のための上手な弁護士の「使い方」(amazon kindle版)


弁護士費用をおさえる方法③ 依頼する事件の種類を変更する


弁護士費用が高い場合、弁護士に依頼する事件の種類を変えることで料金を抑えることができるケースがあります。

たとえば、売掛金の回収を例に取ってみましょう。売買代金を支払ってくれない取引先に対して100万円の未払代金の支払を求めるとします。

この場合、訴訟提起を弁護士に依頼すると、着手金は8万円~10万円が相場です。

これに対して、通常の訴訟ではなく支払督促という手続を弁護士に依頼する場合、着手金は2万円~5万円程度が相場になります。

なぜこのような差が出るかというと、弁護士費用の相場を決めている弁護士報酬基準では、通常の訴訟と支払督促で次のように料金に差が設けられているからです。

【通常の訴訟】
経済的利益の額が300万円以下の場合→8%(ただし最低金額は10万円)

【支払督促】
経済的利益の額が300万円以下の場合→2%(ただし最低金額は5万円)


支払督促は裁判所を使うという点では訴訟(裁判)と同じですが、通常の訴訟よりも簡易な手続です。そのため弁護士に依頼するときの料金も安く設定されています。

その代わり、相手方が異議を申し立てるとそのまま裁判に移行してしまうという難点もあります。裁判に移行すると、結局は弁護士に依頼すれば通常の場合と同様の費用がかかってしまうことになります。

しかし、弁護士名で支払督促を申し立てれば相手方が観念して争わずに支払をしてくれる可能性もあります。そのため、裁判を起こす前に支払督促で様子を見るというのは十分ありうる方法です。

このように裁判以外の手続を使うことで弁護士を利用しつつその料金・費用を安く抑えることができる場合もあるので憶えておくとよいでしょう。その上で相談した弁護士に裁判以外の方法がないか、その場合の費用負担はどうなるかを確認してみるとよいと思います。



以上、弁護士費用をおさえるための具体的方法を3つ紹介しました。

次に費用の総額自体はおさえられなくても依頼時の費用負担を軽くして弁護士に依頼しやすくする方法を2つ紹介します。

依頼時の費用負担を軽くする方法① 分割払いを弁護士にお願いする


依頼時の費用負担を軽減するための第一の方法は「弁護士費用を分割払いにする」というものです。

通常、弁護士に裁判対応などを依頼すると着手金と実費をあわせてかなりまとまった金額のお金を依頼時に一括で払う必要が出てきます。

たとえば、300万円の未払金の回収のために裁判の代理を弁護士に依頼する場合、着手金だけで24万円、収入印紙や郵便切手代等で約3万円、合計すると30万円近いお金が必要になります。

この依頼時のお金については分割払いを認めてくれる弁護士もいます。

弁護士としても最初にまとまったお金が用意できないから事件の依頼自体をクライアントが諦めてしまうよりは少しずつ分割でも払ってくれて事件を依頼してもらったほうがよいと考える人も少なくありません。

そのため、依頼時にまとまったお金を用意するのが難しい人の場合、思い切って弁護士に事情を説明して分割払いをお願いしてみるとよいと思います。

最初に相談した弁護士に分割払いを断られた場合、別の弁護士に相談してみるとよいでしょう。分割払いについては弁護士ごとにどの程度柔軟に対応してもらえるか千差万別なのに複数の弁護士に相談してみることが大切です。


依頼時の費用負担を軽くする方法② 完全成功報酬制で弁護士に依頼する


依頼時の費用負担を軽くするために最も効果的なのは「完全成功報酬制で事件を受けてくれる弁護士を探す」という方法です。

完全成功報酬制とは、事件依頼時に着手金を請求せず事件処理が上手くいった場合に発生する成功報酬のみ請求する料金体系です。

先程例を挙げた通り、裁判対応を弁護士に依頼する場合にかかる初期費用のうち最も大きな割合を占めるのが着手金です。この着手金が不要になれば事件を弁護士に依頼する際の費用負担は相当軽減することができます。

とはいえ、完全成功報酬制には注意点もいくつかあります。

完全成功報酬制の注意点① 受けてくれる弁護士がそれほど多くない


まず、完全成功報酬制は近年増えてきているとはまだまだ日本では採用している弁護士の少ない料金体系です。

過払い金請求など、特定の案件についてだけ完全成功報酬制を採用しているケースもあります。

完全成功報酬制で受けてくれる弁護士を探す場合は「弁護士 完全成功報酬制」、「弁護士 着手金なし」のような検索語で地道に弁護士を探してみる必要があるでしょう。

完全成功報酬制の注意点② 成功報酬が高額になるケースが多い


2つ目の注意点として、完全成功報酬制は着手金アリの通常の料金体系と比べて成功報酬が高額になるケースが多いという点が挙げられます。

着手金が発生しない分、事件処理が上手くいった場合は高額の成功報酬を負担してもらうというのはある程度合理的な話です。ただ、この場合の成功報酬のパーセンテージが高すぎると、クライアントにとっては不利益も大きいでしょう。

たとえば経済的利益の額が300万円以下の事件について裁判対応を弁護士に依頼するときの着手金は請求金額の8%、成功報酬は支払が認められた金額の16%が相場です。

つまり、依頼時の着手金が一切発生しないのであれば成功報酬としては24%(8%+16%)程度であればクライアントにとってメリットが大きいと考えてよいでしょう。着手金アリの料金体系で全額の支払が認容された場合の料金の総額が24%になるわけですからこれは当然です。

一方、いくら着手金が発生しないとはいえたとえば成功報酬の料率が50%を超えるような場合はクライアントにとって最終的な不利益が無視できないほど大きいでしょう。この場合、通常の料金体系で事件処理を依頼した場合と比べると最終的な料金の負担が2倍以上になる可能性があるからです。

もちろんこのあたりは依頼者が初期費用を用意するのがどのくらい大変か、事件処理の見込みがどれくらい高いかといった事情によって変わってきます。弁護士に事件処理の見通しをきちんと確認し、説明を受けた上で利用するようにしましょう。

完全成功報酬制の注意点③ 着手金以外の名目で料金が発生する場合がある


これは完全成功報酬制をうたう料金体系を利用する上で一番注意する必要があります。

「着手金不要」と説明されていても、着手金以外の名目、たとえば手数料や日当といった名前で別途料金が発生する料金体系はありえます。そうした料金を合計してみると結局着手金を払ったのとそれほど変わらなかったというケースもあるため注意しましょう。

これは依頼時にきちんと見積もりを出してもらって確認することが大切です。「着手金なし」という宣伝文句に惑わされず、実際の費用負担はどうなるかということをきちんと確認しましょう。

まとめ―弁護士費用は高いからこそ工夫の余地がある


弁護士として、「弁護士費用は高くありません」と言えるかというと少なくとも私は軽々しくそんなことは言えません。

依頼の段階で数十万円がかかるサービスというのは個人的な感覚としても相当高額な「買い物」だと思います。

それだけに弁護士のサービスを利用するときにはきちんと相場と弁護士費用の仕組みを理解した上で複数の弁護士の見積もりを比較して依頼先を決めることが大切です。

この記事で解説したように弁護士費用の負担を軽減できる方法もあります。こうした方法を実践することで弁護士のサービスの利用が少しでも身近なものになればよいなと思っています。

弁護士費用をおさえて賢く弁護士を利用する方法についてはこちらの書籍で詳しく解説していますので弁護士の利用を検討されている方はぜひご一読ください。




関連記事