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弁護士から見積もりを出してもらったときのチェックポイント

弁護士から見積書をもらったけどどう見たらよいかわからない。

この記事ではそんな悩みを解消できるように弁護士の見積もりをチェックする際のポイントを弁護士自身が解説します。

弁護士費用をおさえるためには複数の弁護士から見積もりを取って比較することが大切ですが、その際、どういう点に注意して見積書を見たらよいかということは弁護士への依頼に慣れていない人にとってなかなかわかりにくい部分。

この記事を読めば、弁護士の見積もりに書かれている内容を正確に理解し、依頼者である自分にとって有利か不利か、リーズナブルな料金設定かどうかということを見極められるようになります。

なお、この記事で書かれていること以外にも、中小企業・個人事業主の方向けの弁護士の効率的な活用法をまとめた電子書籍を出しています。こちらもあわせて読んでいただくと、費用をおさえつつ満足のいく形で弁護士のサービスを使えるようになりますのでぜひ手に取ってみてください。

弁護士が教える中小企業・個人事業主のための上手な弁護士の「使い方」 (長崎国際法律事務所)



この記事を書いている私は中小企業を主なクライアントとして相談対応を行っている弁護士です。私のプロフィールについてご興味がある方はこちらをご覧ください。

>>弁護士紹介


弁護士に見積もりを出してもらう理由


理由① 弁護士の料金は自由化されている


まず、どうして弁護士から見積もりを出してもらう必要があるのか、その理由を簡単に説明しておきます。

第一に、弁護士の料金は自由化されているからです。

料金が自由化されているということは同じ事件であっても弁護士ごとにクライアントに請求する金額が異なる可能性があるということです。

確かに、弁護士の料金には一定の相場があるのは事実ですが、必ずしも相場通りの料金でなければならないというルールはありません。

最初に相談した弁護士が相場よりも高い料金を提示している可能性はありますし、別の弁護士は相場よりもリーズナブルな金額で事件処理を行ってくれる可能性もあります。

そうした比較検討を行うためには弁護士から見積もりを出してもらうことが必要になります。

見積もりを出さずにいきなり契約に進むことだけは避けるようにしましょう。


理由② 料金の算定方法が弁護士ごとに違う可能性がある


先程、弁護士の料金には相場があるということを書きました。

たとえば、裁判対応を弁護士に依頼する場合、請求金額が300万円以下であれば着手金はその金額の8%、成功報酬は16%というのが相場です。

弁護士がこの相場通りの料金設定かどうかということはインターネットで検索して料金表をチェックしてみればわかります。

では、相場通りの料金設定であることが確認できれば、特に見積書の比較をすることなくその弁護士に頼んでよいということになるのでしょう。

実はそうではありません。

なぜかというと、着手金や成功報酬のパーセンテージ以外の部分で弁護士ごとの料金算定方法に違いがある可能性があるからです。

たとえば、着手金であれば弁護士によっては着手金の最低金額を定めている人もいます。最低金額が10万円のケースもあれば、20万円、もっと高いケースもあります。最低金額を設定していない弁護士もいます。

そのため、特に請求金額が小さい事件を弁護士に依頼する場合、着手金の最低金額がどうなっているかという違いによって費用負担にかなりの差が出てくる可能性があります。

着手金について費用負担をおさえるコツはこちらの記事でも詳しく解説していますので見てみてください。

>>弁護士が教える着手金の負担を軽くするための7つの方法


そのほか、着手金、成功報酬の算定の基準となる「経済的利益の額」の算定方法が弁護士によって異なるケースもあります。これも費用負担にかなり違いが出てくるため見積もりを取ってみることが大切になります。

経済的利益の額の考え方についてはこちらの記事を読んでいただくと理解しやすいでしょう。

>>弁護士の料金を決める「経済的利益の額」とは?

理由③ 料金に関する説明を見ることで弁護士への信頼感を確かめられる


また、料金に関する弁護士の説明の明確さや丁寧さを見ることで弁護士が信頼できるかどうかを見分ける判断要素にすることもできます。

当然、説明が詳しく丁寧な弁護士のほうが信頼できます。

また、日当や時間制報酬(タイムチャージ)など依頼時には具体的な金額がわからない料金について「大体どのくらいになりますか?」と尋ねてみるのもいいでしょう。

この質問に対してある程度具体的な根拠を持って見通しを示すことのできる弁護士であれば、事件処理の方向性や結果を予測できているということですから信頼できます。

このような弁護士の信頼感を確かめる上でも複数の弁護士に相談して見積もりを出してもらうのは有効です。

弁護士の見積もりをチェックするときの6つのポイント


チェックポイント① 着手金・成功報酬の料率(パーセンテージ)


弁護士から見積書を出してもらったときに一番初めにチェックするのは着手金と成功報酬の料率(パーセンテージ)です。

先程書いたとおり、着手金と成功報酬のパーセンテージには相場があります。

具体的には、裁判対応を弁護士に依頼する場合の相場は以下のとおりです。

【着手金の相場】

  • 経済的利益の額が300万円以下→8%
  • ■ 経済的利益の額が300万円~3000万円→5%+9万円
  • ■ 経済的利益の額が3000万円~3億円→3%+69万円
  • ■ 経済的利益の額が3億円超→2%+369万円



【成功報酬の相場】

  • 事件の経済的利益の額が300万円以下→16%
  • ■ 事件の経済的利益の額が300万円~3000万円→10%+18万円
  • ■ 事件の経済的利益の額が3000万円~3億円→6%+138万円
  • ■ 事件の経済的利益の額が3億円超→4%+738万円




もし通常の裁判の対応を弁護士に依頼する場合の見積もりで上で書いたパーセンテージよりも高い場合、その弁護士は相場よりも高めの料金設定をしている可能性があります。

もちろん事件の内容によっては高めの料金設定をする正当な理由があるのかもしれません。しかし、それは弁護士に聞いてみないとわからないので、相場と比較して高い場合は弁護士に説明を求めるべきです。

特に理由もないのに相場以上の料金で見積もりを出されたときは別の弁護士への依頼を検討するのも一つの手でしょう。


チェックポイント② 着手金の最低金額


次のチェックポイントは特に金額の小さい事件の処理を弁護士に依頼する際に重要になってきます。それは着手金の最低金額についてです。

たとえば、50万円の金銭の支払を求める裁判の処理を弁護士に依頼する場合、相場通り8%で計算すると着手金は4万円となります。しかし、弁護士の見積もりではこの場合の着手金がもっと高い金額になっていることがめずらしくありません。たとえば、着手金は10万円、または20万円となっていることもあるはずです。

なぜこのようなことが起こるのかというと、それはその弁護士が着手金の最低金額を設定しているからかもしれません。たとえば、着手金の最低額を20万円としている弁護士の場合、上記の例で算定した着手金4万円は最低金額以下ですから、最低金額である20万円の着手金として見積書が出されるはずです。

この最低金額は10万円程度に設定している弁護士が多いはずですが、弁護士ごとに異なります。最低金額を設けずに少額の事件でも8%など一定の料率をかけて算定することにしている弁護士もいます。

そのため、この部分は規模の小さい事件を弁護士に頼む際に費用負担に大きな違いが出てくる可能性がありますから見積書を見る際はよく比較してみるとよいです。

チェックポイント③ 経済的利益の額の算定方法


上で書いた通り、着手金や成功報酬のパーセンテージは弁護士ごとにそれほど大きく異なることはありません。

しかし、それにもかかわらず弁護士ごとに見積金額に大きな違いが出ることがあります。なぜでしょうか?

それはパーセンテージをかけ合わせる「経済的利益の額」のとらえ方に弁護士ごとに違いがあるためかもしれません。

着手金や成功報酬は次のような計算式で算定されます。

事件の経済的利益の額×〇%

つまり、パーセンテージは同じでも経済的利益の額の算定方法が違うと着手金・成功報酬の見積金額に違いが出ることになります。

これはたとえば金銭の支払を求める事件の場合、それほど大きな差は出てきません。

一方、金銭以外のことを相手方に求める事件の場合は経済的利益の額を算定するときに弁護士ごとに計算方法に違いが出る可能性が高くなります。

たとえば、次のような事件です。

  • ■ 離婚を求める調停や裁判
  • ■ 不動産の明渡を求める事件
  • ■ 謝罪広告の掲載やネット上の書込みの削除を求める事件

こうした事件の処理を弁護士に依頼する際、見積もりを出してもらったときは「弁護士が経済的利益の額をいくらと評価しているのか」ということをチェックしてみる必要があります。この算定方法は弁護士ごとにかなり幅が出る可能性があるからです。

弁護士に説明を求めた上で別の弁護士にも見積もりを出してもらって比較すると費用負担をおさえてリーズナブルに弁護士を利用できる可能性があります。

経済的利益の額の算定方法と注意点については下の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください。

>>弁護士の料金を決める「経済的利益の額」とは?

チェックポイント④ 着手金・成功報酬以外の料金発生の有無


裁判対応を弁護士に依頼する場合、料金の基本は着手金+成功報酬です。

しかし、場合によっては着手金と成功報酬以外の料金が別途発生する可能性もあります。典型例は「日当」です。

日当とは、事件処理のために弁護士が時間の拘束を受けた場合に発生する料金です。たとえば半日の拘束で1万円、1日の拘束で3万円、のような形で設定されます。

弁護士への依頼を検討する際、日当の発生があるかどうか、発声する場合の発生条件や金額は必ず弁護士に確認しておきましょう。なぜならこの日当、依頼時にはあまり意識しませんが裁判が長引くと意外に高額の支出になることがあるからです。

たとえば、裁判が長期化すると1年や1年半続くことはざらにあります。

この場合、1ヵ月に1回、弁護士が裁判に出頭するたびに仮に2万円の日当が発生するとすればどうでしょうか。12ヵ月で24万円、18ヵ月で36万円。着手金と同額がそれを超えるほどの費用負担になります。

そのため見積書を出してもらったときは日当についての記載はしっかりチェックする必要がありますし、記載がなければ弁護士に確認する必要があります。

日当については下の記事で詳しく説明していますので、気になる方はぜひお読みください。

>>弁護士の日当について

チェックポイント⑤ 実費負担の範囲


弁護士の見積書でチェックすべきポイントとしては「実費」の項目も重要です。

前提として、いわゆる弁護士費用には「料金」(報酬)と「実費」(費用)があります。

料金とは弁護士の仕事の対価であり、弁護士の売上に相当するものです。

それに対して実費とは、たとえば裁判所に納める収入印紙代や郵便切手代、裁判所に出頭するための交通費など、裁判を行う上でかかってくる費用です。これは基本的に弁護士の手許には残らない費用です。

この実費についてどこまでがクライアントの負担でどこまでが弁護士の負担かということは、実は弁護士ごとに取扱いが異なる部分です。

多くの弁護士は裁判を起こすための収入印紙代や郵便切手代は依頼者の全額負担としています。

しかし、交通費については取扱いが違う可能性があります。たとえば、弁護士の事務所の管内にある裁判所への出頭であれば交通費はクライアントには負担させないという弁護士もいれば、そういう場合もきっちりクライアントに負担させる契約にする弁護士もいます。

そのほか、たとえば事件処理に必要な書面を作成するためのコピー代、電話代、弁護士会を通して調査(弁護士会照会)を行うための照会手数料など、事件処理には色々な実費がかかります。これらについてどこまでクライアントに負担させるかは弁護士によって違います。

一つ一つは小さい金額でも裁判が長引くと意外に大きな出費になる部分ですので、見積もりを出してもらったときは料金だけでなく実費についても比較検討するとよいでしょう。

チェックポイント⑥ 控訴審以降の取扱い


最後に、見落としがちなポイントとして裁判が控訴審に移行した場合の料金が挙げられます。

普通、弁護士に裁判対応を依頼する場合、着手金や成功報酬は審級ごとに発生します。つまり、地裁の第一審で弁護士に依頼すると依頼時に着手金、そして判決が出たらその内容に応じて成功報酬が発生しますが、その後、控訴がなされて事件が控訴審(高裁)に移行するとそこでもまた別途着手金と成功報酬が発生することになります。

このとき控訴審の着手金について一審依頼時と同様のパーセンテージで計算するか、それとも継続案件ということで多少割り引いた金額にしてくれるのかは弁護士によって異なります。

また、事件が一審で終わっても相手方が判決に任意に従わないというケースもあります。この場合、判決の内容を実現するためには強制執行といって差押えや競売の手続を別途踏む必要が出てきます。この強制執行の手続についても弁護士に依頼すると着手金や成功報酬が別途発生するケースが一般的です。

裁判手続から強制執行へ引き続き同じ弁護士に依頼する場合の着手金・成功報酬の額をどうするかは弁護士によって差がある部分です。そのため、裁判を弁護士に依頼する段階で、控訴審や強制執行に移行した場合に料金はどうなるかということは弁護士に確認しておくとよいでしょう。

どの弁護士に依頼するかは一審の裁判にかかる料金や費用だけでなく控訴や強制執行を行う場合の費用負担も総合して検討する必要があります。

まとめ―複数の弁護士から見積書を取って比較することが大切


以上、本記事では弁護士に見積もりを出してもらうべき理由と、提出された見積書をチェックする際のポイントについて解説しました。

依頼前に見積書を出してもらうことはリーズナブルに弁護士を利用する上で非常に重要です。特に、複数の弁護士から見積もりを取って比較検討することで費用面でも満足のいく形で弁護士への依頼が可能です。

弁護士の効率的な活用方法について詳しく知りたい企業経営者の方はこちらの書籍も参考にしてみてください。



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