事務所ブログ

雑記帳

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 弁護士費用
  4. 弁護士が教える弁護士の料金表の読み方-基本編

弁護士が教える弁護士の料金表の読み方-基本編

弁護士費用について知りたくて法律事務所のウェブサイトを調べると出てくるのが料金表です。

相談先・依頼先の弁護士を決めるために料金表を比較してみようと思って読んだが内容がわかりにくい。

そう感じる方も多いかもしれません。

弁護士の料金表には特殊な用語や考え方が含まれているため、法曹関係者以外の人にとってはかなりわかりにくい内容です。特に、これまで弁護士の法律サービスを利用したことのない人の目には難解なものに映るかもしれません。

この記事では、弁護士費用や報酬について理解する上で大切な料金表の読み方を弁護士自身が解説します。

この記事を書いている私は中小企業を主なクライアントとする弁護士です。単なる用語解説にとどまらず、弁護士だからわかる弁護士報酬や費用の実態をふまえて解説していきますのでぜひお読みください。

執筆者のプロフィールについてお知りになりたい方はこちらのページをご覧ください。

>>長崎国際法律事務所の代表弁護士・谷直樹のプロフィールはこちら


弁護士の一番スタンダードな料金表は「弁護士報酬基準」


弁護士の料金表の見方を解説するといっても、弁護士ごとに料金表はまちまちなので上手く解説できないのではと思うかもしれません。

しかし、実は多くの弁護士が使っている料金表は大部分が同じ内容なのです。

なぜかというと、日本弁護士連合会(日弁連)が定める弁護士報酬基準というものを多くの弁護士がそのまま自分の法律事務所の料金表として使っているからです。

この報酬基準には法的な拘束力はありません。そのため、弁護士はこれに従わずに独自に全く別の料金表を作ってもいいのです。

しかし、現実には大多数の弁護士がこの報酬基準と全く同じか、もしくはこれを多少修正しただけの料金表を使っています。

そのためこの報酬基準が現在も弁護士費用の「相場」として機能していますし、その報酬基準に沿って作られた料金表の読み方を理解すればほとんどの弁護士の料金表の読み方も理解できるということになります。

以下ではこの弁護士報酬基準に出てくる料金(報酬)の種類の意味や金額算定の際に出てくる重要な概念である「経済的利益の額」について解説します。


料金(報酬)の種類


弁護士報酬基準には大きく分けると7種類の料金の種類が出てきます。以下のとおりです。

  • ■ 法律相談料
  • ■ 鑑定料
  • ■ 着手金
  • ■ 報酬金(成功報酬)
  • ■ 手数料
  • ■ 顧問料
  • ■ 日当


以下ではそれぞれの料金の意味について簡単に解説していきます。これは弁護士の料金表を見る上で基本となりますので頭に入れておいていただくとよいと思います。


法律相談料


法律相談料とは、弁護士が法律相談を行うことに対して相談者が支払う料金です。

この法律相談料は普通、30分につき5,000円、1時間につき10,000円のように時間単位で計算されます。

弁護士報酬基準では次のように定められていました。

  • ■ 初回市民法律相談料→30分ごとに5,000円~10,000円
  • ■ 一般法律相談料→30分ごとに5,000円~25,000円


「初回市民法律相談」というのは一般市民向けの初回の法律相談のことです。たとえば、会社や企業によるビジネスに関する法律相談や2回目以降の相談はこれには含まれないということになるでしょう。

「一般法律相談」というのは要するに初回市民法律相談以外の法律相談と理解すればよいと思います。

弁護士報酬基準では初回市民法律相談のほうが一般法律相談よりも法律相談料の上限が安く設定されています。

もっとも、現在、弁護士の圧倒的多数は法律相談料として30分5,000円、または1時間10,000円の料金設定を採用しています。これを超える金額を設定している法律事務所もありますがかなり少数派でしょう。

また、初回の法律相談料は無料としている弁護士も最近はかなり多いです。


鑑定料


鑑定料とは、弁護士が法律に関して意見や判断結果を表明することに対する対価として支払われる料金です。

たとえば、次のような事柄について弁護士は鑑定を行うことがあります。

  • ■ ある問題について法律を適用するとどうなるか
  • ■ ある行為が違法か適法か
  • ■ ある契約が有効か無効か


弁護士は法律の専門家ですからこうした法的問題に対しては信頼性のある意見や判断を出すことができます。弁護士が鑑定を依頼されたときは鑑定書または法律鑑定書という名前の書面を作成して提出するケースが一般的です。

この鑑定料について弁護士報酬基準では10万円~30万円と定められています。ただし、事案が複雑・特殊な場合はこれを超える金額の鑑定料も可能としています。

たとえば、通常の弁護士が詳しい知識を持たない特殊な法分野に関する鑑定や、外国法令の調査等が必要になるような難易度の高い鑑定の場合、30万円を超える鑑定料になることがあるでしょう。


着手金


着手金とは、弁護士の事件処理に対する対価のうち、依頼時に支払う料金です。弁護士が事件に「着手」するときに払う「お金」なので「着手金」です。

弁護士報酬基準では、事件の種類に応じて、「経済的利益の額に一定のパーセンテージをかけて計算する方法」または「一定の範囲内の金額を着手金とする方法」で定められています。

この着手金についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

>>弁護士の着手金について


また、着手金の負担をおさえたい方はこちらの記事をお読みください。

>>弁護士が教える着手金の負担を軽くするための7つの方法



報酬金(成功報酬)


報酬金は成功報酬という呼び方をすることもあります。これは、弁護士の事件処理が成功した場合にその成功の度合いに応じて発生する報酬のことです。

この成功報酬は着手金と組み合わせて使われるのが一般的です。

算定方法も着手金と同様であり、事件の経済的利益の額に一定の料率(パーセンテージ)をかけて算出したり、あるいは事件ごとに一定の範囲内の金額で定めるものとされています。

成功報酬(報酬金)について、詳しくはこちらの記事をお読みください。

>>成功報酬について


また、弁護士の成功報酬を考える際の注意点についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

>>弁護士が教える成功報酬の落とし穴と対策



手数料


手数料は弁護士の事務処理に対する対価です。簡単に言うと手間賃のようなものだと考えればわかりやすいでしょう。

着手金や成功報酬は裁判など比較的時間がかかる複雑な案件の場合に発生する料金です。

これに対して手数料はもっと簡単に、短期間で完了するような事務の処理を弁護士に依頼するときに発生します。

たとえば、弁護士報酬基準では次のような仕事を弁護士に依頼するときは手数料という形で料金が発生すると定められています。

  • ■ 証拠保全
  • ■ 即決和解
  • ■ 公示催告
  • ■ 倒産整理事件の債権届出
  • ■ 簡易な家事審判
  • ■ 法律関係調査
  • ■ 契約書作成
  • ■ 内容証明郵便作成
  • ■ 遺言書作成
  • ■ 遺言執行
  • ■ 会社設立
  • ■ 会社設立等以外の登記等
  • ■ 株主総会指導
  • ■ 現物出資等証明
  • ■ 簡易な自賠責請求
  • ■ 任意後見、財産管理、身上監護



弁護士報酬基準では手数料の額は案件の種類に応じて定められています。そのため手数料の額を知りたい場合は自分が弁護士に依頼しようとしている事件がどの類型にあたるのかを確認する必要があるでしょう。

手数料について詳しくはこちらのページでも解説していますのでご参照ください。

>>弁護士の手数料について


顧問料


顧問料とは、顧問弁護士に対して支払う料金のことです。

顧問弁護士とは、自分(自社)と顧問契約を結んでいる弁護士です。顧問契約はその弁護士に継続して相談をすることを基本的な内容とする契約ですが、その中身は弁護士や法律事務所によってかなりバリエーションがあります。

弁護士報酬基準では顧問料については次のように定められています。

  • ■ 事業者の場合の顧問料→月額5万円以上
  • ■ 非事業者の場合の顧問料→年額6万円(月額5,000円)以上


事業者というのは株式会社、有限会社、合同会社などの会社や一般社団法人など、事業活動を行っている法人のほか、個人事業主、自営業者、フリーランスなど個人名義でビジネスを行っている人も含まれます。

非事業者というのはこうした事業者以外の人で、要するに商売をしていない一般の個人と考えればよいでしょう。

弁護士報酬基準では事業者のほうが顧問料はかなり高めに設定されていることがわかると思います。資産家などを除くと商売をされていない個人の方で顧問弁護士を雇っている人は少ないと思いますから、普通は顧問弁護士というと事業者向けだと思います。

ただ、この顧問料に関しては弁護士報酬基準の月額5万円以上というのは現在の相場から見ると少し高めです。もちろん月額5万円やそれ以上の金額の顧問契約を結んでいる会社もありますが、現在だと月額2万円~5万円の範囲内が相場ではないかと思います。


日当


日当は、弁護士が事件処理のために時間拘束を受けたことに対する対価として支払われる料金です。

弁護士報酬基準では次のような形で定められています。

  • ■ 半日→3万円以上5万円以下
  • ■ 1日→5万円以上10万円以下


たとえば、会議や打合せへの立会いや同席を求めるようなケースではこの日当だけで弁護士に依頼するという場合もないわけではありません。

しかし、多くのケースではむしろ、たとえば裁判対応を弁護士に依頼する場合に遠方の裁判所への出頭が必要になったときに期日出頭1回につき日当が発生する、というようなときにこの日当が問題となります。

つまり着手金・成功報酬とは別途この日当が発生するということです。

日当については思いがけない費用負担になることもあるので目立たないですが注意が必要です。詳しくは下の記事で解説していますので参考にしてみてください。

>>弁護士の日当について



経済的利益の額


裁判対応を弁護士に依頼する場合、着手金と報酬金(成功報酬)を算定するときに出てくるのが「事件の経済的利益の額」です。

これは要するに依頼者がその事件で獲得する利益をお金に直した場合の金額のことです。

金銭の支払を求める裁判だと、これは要するに請求金額ということになるのでわかりやすいでしょう。それ以外の事件の場合、この経済的利益の額を算定するのは少しコツがいります。

経済的利益の額についてはこちらの記事で詳しく説明していますので参考にしてみてください。

>>弁護士の料金を決める「経済的利益の額」とは?



まとめ―弁護士報酬基準の読み方を知れば弁護士の料金がよくわかる


本記事では弁護士の料金表を見る際に必要となる基本事項について解説しました。

多くの弁護士は日弁連の弁護士報酬基準に沿って自分たちの料金表を作っていますから料金について知りたいときは弁護士報酬基準に書かれている用語の意味などを理解すると理解しやすいでしょう。

ただ、もちろん弁護士の料金は自由化されていますから、全ての弁護士が必ずしも弁護士報酬基準と同じ基準で料金表を運用しているわけではありません。

そのためウェブサイトに出ている料金表だけを見て検討するのではなく複数の弁護士から見積もりを出してもらって比較する姿勢が大切です。ただ、その場合も弁護士報酬基準の読み方・考え方を知っておくと料金表の比較がしやすいはずです。

中小企業や個人事業主の方の場合、弁護士を効率的に、コストをおさえつつ活用するノウハウをまとめたこちらの書籍がお勧めです。費用負担を少なくリーズナブルに弁護士のサービスを使いたい方、弁護士費用が高すぎるとお考えの方はぜひこちらもあわせてお読みください。



関連記事