
弁護士の日当について
こんにちは。長崎で中小企業を主なクライアントとする弁護士をしている谷直樹です。
私は中小企業庁の所管する経営相談窓口である「長崎県よろず支援拠点」でコーディネーター(相談員)をしています。
中小企業の経営者や個人事業主の方から弁護士の探し方や料金について相談を受けることも多いため、その経験をふまえて弁護士の料金について知っておいてほしいことを記事にまとめています。
この記事では弁護士の「日当」について解説します。
この日当という料金。着手金や成功報酬と比べるとあまり聞き慣れないものかもしれません。
しかし、意外と大きな費用負担になってしまうこともあり、弁護士への依頼時には十分注意する必要がある料金です。
なお、着手金と成功報酬、手数料についてはそれぞれ下の記事で解説していますのであわせてご一読ください。
また、弁護士の着手金を安くおさえるコツについてはこちらの記事がおすすめです。
目次
主な弁護士の料金の種類
日当について解説する前に弁護士の料金の種類について簡単にまとめておきます。
主な料金としては次の5種類があります。
- 着手金
- 成功報酬
- 手数料
- 日当
- 時間制報酬(タイムチャージ)
この中で一番一般的なのは着手金と成功報酬でしょう。
着手金とは、弁護士に事件の処理を依頼する最初の段階で発生する料金。これは事件処理が上手くいっても行かなくても戻ってきません。
一方、成功報酬とは事件が終わったときに事件処理の成功の度合いに応じて発生する料金です。
中小企業や自営業者の方が弁護士に裁判を依頼するときは通常、この着手金と成功報酬をセットにした料金で契約することになるはずです。
日当は着手金・成功報酬と組み合わせて発生する
では、このような着手金・成功報酬と、この記事で解説する日当の違いは何でしょうか。
日当とは、事件処理のために弁護士が時間拘束を受けた場合に発生する料金のことです。
たとえば、裁判対応を弁護士に依頼した場合を例にとって考えてみましょう。
この場合、弁護士は大体1ヵ月に1回くらいのペースで裁判所に出頭してクライアントの代わりに裁判手続を行います。
この裁判所への出頭には当然それなりの時間がかかります。
普通の民事裁判であれば裁判期日には書面の確認と次回期日までにする準備の内容を確認するくらいで終わるので大体10分くらいで終わります。
とはいえ、裁判所が弁護士の事務所から遠方にある場合はどうでしょうか。
たとえば、東京都内に事務所がある弁護士に千葉地裁での裁判対応を依頼した場合、裁判所まで出頭して帰ってくるのに往復2時間くらいはかかるかもしれません。
これがたとえば長野地裁での裁判の場合は裁判所への出頭だけで1日がかりの仕事になるでしょう。
このような場合に弁護士の時間拘束の対価として発生する料金が日当です。
そして、この日当は着手金+成功報酬制の一般的な料金体系で弁護士に依頼した場合でも、着手金や成功報酬とは別に発生します。
つまり、裁判所への出頭など弁護士の時間拘束が起こりそうな事件の場合、着手金や成功報酬だけでなく日当についても依頼時にきちんと確認しておかなければならないということですね。
日当の相場は半日拘束で3万円~、1日拘束で5万円~
では、気になる日当の料金相場はいくらくらいなのでしょうか。
実は弁護士の料金は自由化されているので、日当の額についても各弁護士が自由に決めることができます。極端な話をすると、日当が1回あたり1万円の弁護士もいれば1回あたり10万円の弁護士もいるということです。
とはいえ、日当を含めて弁護士の料金にはやはり相場というものがあります。
参考になるのが日弁連が昔定めていた報酬基準です。
現在は料金が自由化されているため報酬基準に拘束力はないのですが今でも多くの弁護士がこの報酬基準に沿って自分の報酬を決めています。
つまり、報酬基準を見ると弁護士の料金のおおよその相場を知ることができるということですね。
この報酬基準によると、弁護士の日当は次のように定められています。
- 半日の場合→3万円以上5万円以下
- 1日の場合→5万円以上10万円以下
この日当の基準を現在でも多くの弁護士が採用していると考えられます。
ちなみに、ここでいう「半日」、「1日」の意味についても報酬基準の中にはちゃんと定義がされています。
- 半日=往復2時間を超え4時間まで
- 1日=往復4時間を超える場合
つまり、裁判所への出頭について見ると、往復2時間以内であれば日当は発生しないという料金体系をとっている弁護士が一般的だと思います。
県庁所在地にある弁護士の事務所であれば管内の裁判所への出頭に要する時間は大体2時間以内のはずですから普通は毎回の裁判出頭ごとに日当が発生することはないはずです。
もちろん、日当の算定方法についても弁護士ごとに独自に決めているので、たとえば「拘束時間に関わらず裁判所への出頭1回ごとに〇〇円」というような定め方をしている弁護士もいるかもしれません。
そのため、日当については金額だけでなく算定方法についてもきちんと確認した上で弁護士への依頼を行う必要があります。
たとえば、毎回の裁判への出頭ごとに2万円の日当が発生する契約の場合、裁判が1年くらい続いて10回程度裁判所に出頭するケースはめずらしくありませんから、合計すると日当だけで20万円も料金が発生することになります。
これは下手をすると着手金よりも高額になるので、依頼時に十分注意する必要があるでしょう。
日当を含め費用をおさえて弁護士をリーズナブルに使うには
この記事を読んで弁護士の日当が意外にも大きな費用負担になってしまう可能性があることをおわかりいただけたと思います。
こうした弁護士の費用をおさえつつリーズナブルに弁護士をサービスを利用するためのノウハウがあります。
たとえば、日当であれば発生する金額に上限(キャップ)を設けてもらうことが考えられますね。たとえばキャップを10万円と設定しておけば、裁判が長引いてしまっても最大10万円ということで費用の総額を予測できます。
また、複数の弁護士に見積もりを出してもらって比較することも非常に重要です。弁護士の料金には相場があるとはいえ、細かい算定方法などはまちまちな部分があるため、誰に依頼するかで最終的にかかってくる料金に大きな差が出てくることは十分ありえます。
こうした弁護士の費用のこと、効率的な弁護士の使い方について中小企業向けに解説した書籍を出していますので、これから弁護士を使おうと考えている方はぜひご一読ください。本の値段は500円ですが、これを読むことで節約できる金額は数万円、数十万円になる可能性があります。