記事の監修を弁護士に依頼する3つのメリット
法律関係のブログやウェブサイトの記事に弁護士として監修を行ってほしい。
そうした依頼を受けて記事の監修をお引き受けしています。
弁護士としての知識や経験に基づいて法律や法制度についての記事の監修を行うのはとても意義のある仕事だと思います。
この記事では、弁護士に記事の監修依頼を行うことを検討されているサイト運営者の方向けに、そのメリットを解説します。
なお、この記事を書いている私は企業法務、知財法務を主に取り扱う弁護士です。執筆者のプロフィールをお知りになりたい方は下記のページをご覧ください。
>>長崎国際法律事務所所属・代表弁護士 谷 直樹のプロフィールはこちら。
目次
法律に関する記事は弁護士以外が書いてもよい?
まず、とても基本的なことから。
法律に関する記事は弁護士資格を持っていない人でも書いてもよいのでしょうか。
結論から言うとこれを制限したり禁止したりする法律はありません。
少し詳しい方は「弁護士法」という法律があることをご存知かもしれません。弁護士法はその名の通り、弁護士という資格や職業について定めた法律です。
この弁護士法の中には弁護士として登録を受けていないとすることのできない仕事が何かということも定められています。
弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
これらの条文に書かれているように弁護士以外の人(非弁護士)は法律事件に関して法律事務の取扱いを業として行うことはできません。
そこで、法律に関する記事を書くことが「法律事件に関する法律事務の取扱い」にあたるのかということが問題となりますが、記事の執筆はこれにはあたりません。
この「法律事件」が何を指すのかということについては色々な解釈があり、大きく分けると紛争性が必要かどうかという点で見解がわかれています。
しかし、「法律事件」をどうとらえるかにかかわらず、「記事の執筆」は「法律事務」ではないため弁護士法72条には抵触しません。
「法律事務」というのは鑑定、代理、仲裁、和解など法律上の効果を発生、変更、保全するための事項の処理を指すからです。記事の執筆は情報の提供であり、こうした事項の処理とは異なります。
記事の執筆はそもそも法律事務ではありませんから、弁護士資格を持っていない人でもこれを行うことができます。また、そうした記事の執筆によって報酬を得たり、収益化を行うことも禁止されません。
記事の執筆とよく似た行為に書籍の執筆というものがありますが、これを考えてみればよくわかります。
法律書の執筆を行っているのは大学の法学部の教授などですが、必ずしも弁護士資格を持っているわけではありません(持っている人もいます)。
弁護士でなければ法律に関する本も書けないということになると、法学部の先生が自著を出版しようと思ったらまず司法試験に合格しなければならないということになってしまいますがこれはナンセンスです。
司法試験や弁護士資格というのは裁判などの法律事務を的確に行うための専門知識や能力を持っていることを証明する試験であり資格です。
しかし、こうした知識と能力は法律に関する学術的な知識とイコールではありません。そのため、大学の教授をはじめ、法律に関して詳しい人がその知識を広めるために書籍を書いたり出版したりすることは禁止されていないのです。
インターネット上のブログや記事に関しても書籍の執筆と同じです。
法律について詳しい人が自分の知識に基づいて記事を書くのは法律上、何も禁止されていません。
弁護士に法律記事の監修を依頼するメリットとは?
弁護士資格を持っていなくても法律に関して記事を書いてもよい。そして、その記事を使って収益化を行ってもよい、ということを書きました。
つまり、この記事を読んでいるあなたが法律問題を解説したり、法律書をお勧めするレビュー記事などを書いているとして、その監修を弁護士に依頼しなければならないかというと、そんなことはない、ということになります。
では、弁護士に記事の監修を依頼する意味はないのでしょうか?
そうではありません。
法律に関する記事の監修を弁護士に依頼するのは大きなメリットがあります。以下、そのメリットについてまとめてみます。
弁護士に記事監修を依頼するメリット① 記事の内容の間違いを防げる
記事の監修を弁護士に頼む一番のメリットは内容の正確性を確保できることでしょう。
弁護士資格を持っていない方で法律関係の記事を執筆されているのはおそらく法学部で法律を勉強したり、会社の法務部などの実務を経験されていたり、法律についてある程度知識がある人が多いのではないかと思います。
とはいえ、法律というのは非常に専門的な分野ですので、内容的に誤りのない記事を書くのはなかなか大変です。
また、裁判対応や紛争に関する交渉の経験がないと、法的には正しくても実態とかけ離れた記事になってしまうことがあります。
弁護士は職務として法律を専門的に扱っていますので知識面だけでなく、その経験に照らして記事の内容を精査することが可能です。知識的な部分はもちろん感覚的にズレがあった場合も修正提案をしてもらえるはずですので記事の内容の正確性を確実に担保できます。
難しい法律問題について間違いのない記事を作ることができる。
これが弁護士に記事の監修を依頼する一つ目のメリットです。
弁護士に記事監修を依頼するメリット② 読者の信頼を獲得できる
二つ目のメリットは一つ目の正確性の確保ともリンクしています。
それは、弁護士監修済みの記事であれば読者の信頼感が大きく向上するということです。
弁護士の自分が言うのもなんですが、弁護士という資格は法律の専門職としてはおそらく一番知名度のある資格だと思います。「弁護士」と聞けば、裁判や法律について詳しくなくても「法律の専門家」というイメージを持つはずです(そして、そのイメージは正しいです)。
このように法律の専門家として一般に認知されている弁護士を「記事監修者」という形で記事上に表示することができるのは、その記事を読む人の信頼感を増す上で非常に大きなメリットとなります。
法律の専門職としては弁護士以外にも、行政書士や司法書士、社会保険労務士(社労士)などがいて、そういった専門職の人に監修してもらうのも手です。特にそれぞれの専門分野に関係する記事についてはそういった弁護士以外の専門職を記事監修者とするのはよいと思います。
ただ、行政書士には、裁判など紛争性のある法律問題については職務を行うことができないという制約があります。そのため、記事の内容が民事上のトラブルなどを含む問題の場合、行政書士は監修者としてあまり適切ではないでしょう。
また、司法書士は簡易裁判所で扱う民事事件であれば認定を受けることで代理人として職務ができるので、比較的少額な民事トラブルを含む記事であれば司法書士に監修を依頼するのはありうる選択肢です。ただ、刑事事件や訴額が少額とはいえない事件の場合、職務上扱えないためそうした内容を含む記事の場合、専門的な見地からの監修が難しいケースもあります。
社労士は労働に関する記事については専門的な知見を持っているので監修者として適切です。ただ、労働問題以外の場合、業として扱うことができないので監修を依頼できる記事の範囲は限られるでしょう。
弁護士の場合、法律問題全般を職務として扱うことができますから、法律に関する記事であれば広く何でも監修を行うことができます。また、読み手の側も弁護士=法律の専門家というイメージが固まっていますから信頼性獲得という点からも大きな意義があります。
記事のタイトルに「弁護士監修」と表示することで検索した読者にクリックしてもらいやすくなる効果も期待できるでしょう。
弁護士に記事監修を依頼するメリット③ SEO対策上有利になる可能性がある
法律に関する記事の監修を弁護士に依頼する場合、Googleなどのサーチエンジンで上位表示されるのに役立つなどの効果が期待できる可能性があります。いわゆるSEO対策上の利点ということです。
サーチエンジンとして圧倒的なシェアを誇るGoogleは2020年10月にYMYLに関するガイドラインを出しています。
YMYLとは、Your Money or Your Life(あなたのお金、あなたの人生)の頭文字を取った言葉。ガイドラインでは例としては、以下のものがYMYLのカテゴリーに含まれるとしています。
- ■ ニュースや時事問題
- ■ 市民的権利義務、政府、法律に関する事項
- ■ 金融に関する事項
- ■ 物品やサービスの購入に関する事項
- ■ 健康や安全に関する事項
- ■ 人種、民族、宗教など特定の人のグループに関係する事項
こうした事項はどれも私たちの生活や人生に大きな影響を及ぼします。間違った情報、不正確な情報が広まると私たちのお金や人生の幸福度に大きなマイナスとなります。
そのため、Googleとしてはこうした情報について書かれた記事については高いクオリティを求めるとガイドラインで明記しています。
「高いクオリティ」の内容には色々な考慮要素があって、ここでは全てを紹介するのは控えますが、その中の一番最初に挙げられている概念がE-A-Tです。
E-A-TとはExpertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の頭文字を取った言葉です。つまり、YMYLに関する記事は他の記事と比べて上位表示されるために専門性、権威性、信頼性が特に重要ということになります。
「法律に関する事項」は上のリストを見ればわかるとおり、YMYLに含まれますからGoogleのガイドラインに沿って考えると、専門性、権威性、信頼性を確保しなければSEO上不利になるでしょう。
ガイドラインによれば記事の内容について責任を有する人がどんな人かということも考慮されるようですから、法律に関する記事について弁護士に監修を依頼して、監修者として記事上に表示させてもらうことはSEO対策上、有効である可能性があります。
「有効である可能性があります」という書き方をしたのは、私が一弁護士であってSEO対策の専門家というわけではないからです。そのため、詳細についてはSEO対策の専門家のアドバイスを受けることをお勧めしますが、少なくともGoogleのガイドラインを素直に読めば記事の監修者として弁護士を据えることはSEO対策上有利になるだろうと予測できます。
弁護士に監修を頼むならこんな記事
以上、弁護士に記事の監修を依頼するメリットを詳しく解説しました。
それをふまえて弁護士に監修を依頼する場合、どんな記事が適切でしょうか。
先程書いたとおり、弁護士は法律問題全般についての専門家ですので、法律に関係する記事であれば基本的にどんなものであっても弁護士に監修を依頼するのは適切と考えられます。
たとえば、次のような記事は弁護士の監修が行うことで先程書いたようなメリットが期待できます。
- ■ 交通事故対応に関する記事
- ■ 離婚問題に関する記事
- ■ 相続や遺産に関する記事
- ■ 会社や企業のトラブルに関する記事
- ■ 不動産取引やトラブルに関する記事
- ■ 物品の売買やサービスに関するトラブルを含む記事
- ■ 裁判に関する記事
また、政治問題や社会制度に関する記事も、特に法律が多少なりとも関係してくる内容であれば弁護士を監修者に据えるのは検討に値します。なぜかというと、ニュースや時事問題もYMYLに含まれていますし、一方、弁護士は憲法や行政法など政治に関係する法律についても専門的な知識を持っているからです。
なお、弁護士に記事の監修を依頼する場合、可能であればその弁護士の得意とする分野の記事の監修を依頼するのが望ましいでしょう。「法律」と一口に言っても非常に範囲が広いので弁護士ごとに専門分野や得意・不得意があります。
たとえば、私であれば重点的に取り扱っているのは債権回収、契約書、訴訟対応、知財などの会社や企業の法律問題や国際的な取引などに関係する問題。こうした分野に関係する記事であればより迅速かつクオリティの高い記事の監修が可能です。
弁護士によっては記事の監修の仕事にそれほど積極的ではない人もいますが、私は法律に関する正しい知識や情報を広めることも弁護士の大切な仕事だと考えています。
もし、法律に関する記事について弁護士への監修依頼を検討されている方はぜひ本ウェブサイトのお問合せフォームからお気軽にご連絡ください。記事の内容等をふまえてお見積りさせていただきます。